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同人活動日記、あ~んど、というかほぼ雑談
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『ここで、臨時のニュースをお伝えします』
NPC――NewProsperityCompany――それは、日本を代表する超大手企業。工業・農業他あらゆる事業を抱える「サカエグループ」の大元の会社である。そんなNPCの重役会議室に置いてある84インチの巨大プラズマテレビからとあるニュースが流れ始めた。
部屋は明るく、オランダから取り寄せた特注の椅子とテーブルが置かれ、会議室とはほど遠いようなくつろげる空間であった。家具の一つ一つが、NPCの繁栄を物語っている。
ニュースの内容は、NPCと肩を並べる日本の二大巨頭の一つ、ビハツ。美しい発展をめざすビハツとは、ライバル関係にあった。
年々、抜きつ抜かれつの業績であり、国内景気も、この二社で分かってしまうほど大きな会社だ。
以前から地盤のあったビハツに対し、ここNPCは社長、豊津惣右助一代で急激に業績を伸ばした会社だ。サカエグループの中核を成す会社にしたてあげたのも、豊津惣右助の強欲的とも言える経営手腕の賜物だ。
彼、豊津惣右助も含め、サカエグループの重役たちは揃って自社製のプラズマテレビに食い入っていた。
若いニュースキャスターにではない。
至極当然、彼女が語るニュースに、である。
『東京株式市場の上場企業である、株式会社ビハツの副社長、川口真澄氏から我がイブニング・ワイド編集局宛に、一枚のファックスが届きました。
主たる内容は、株式会社ビハツ内で社内でも一部のものしか知らず、極秘裏に行われていた、“Zエネルギー”なるエネルギーに関しての研究に関してのものでした』
続いてニュースキャスターは、ファックスの通りに、Zエネルギーについて語り出す。
当たり前だが全国放送で、今のニュース番組・ワイドショー番組の中で最高の視聴率を毎日叩き出す人気番組、イブニング・ワイド。明暗様々な報道に加え、徹底的な調査が他番組との違いを浮き彫りにしている。イブニング・ワイドは、今もそのニュースをお茶の間に届け続けている。
「計画は順調なのか、豊津くん?」
グループのさらに上、重役の一人が口を開く。かしこまった背広に、高級ブランドのネクタイ。
「ええ、順調に、ビハツの株価は下落しているようです。経営破綻も目前でしょう」
豊津は、機械的な営業スマイルで答える。彼が他人と話す時はいつもこれだ。もっとも、二枚目俳優を思わせる伊達男な豊津には、そんな無機質な表情も綺麗に見えるのだけど。
大企業のトップに立った豊津が敬語を使うのは、グループ内のこの重役会議くらいである。
「いやしかし、よくやってくれた」
豊津は内心、ガマガエルと上司を嘲笑う。
彼の禿げ頭は、権力に支えられて残っているのだから。ガマガエル似の大男に嫌悪感を覚えながらも、笑顔の仮面を被る。
「これで、我が社もこの世界の救済へ、一歩近付くことになります」
豊津は続ける。
「それで川口くん、メンバーズはもうウェンディとやらに向かっているのか?」
彼は、視線を脇にいる小太りの男へと移す。
NPCの重役会議に、いるはずのない男。
川口真澄は、いやらしく汚ならしく笑う。黄ばんだ歯に、がたがたの歯並び。
豊津の最も嫌いとする容姿の男。彼はどういうわけか、NPCの会議室にいた。
唾液の絡んだ口を開いて、川口は豊津の質問に答える。
「えェ。すでにメンバーズの四人をォ向かわせています」
四人、と聞いて一瞬豊津はぴくりとする。
「四人? 私は、五人、と聞いていたが?」
「問題ィありません。順序があるんですよ」
顔を見ながら話すと川口の口からねちょりという音が聞こえてきそうだ、と豊津は脳内で一瞬思う。
「順序? 何だ、それは?」
普段なら、川口のような金の亡者とは腹の探り合いなどしない彼。なぜなら、そんな人種は金を得たいという目的が一番にあるからだ。
だが、豊津の出世がかかっている今、それは違った。
うちに秘めた野心が、彼を焦らせるのだ。
『只今、速報が入りました』
キャスターのせき立てる声に便乗し、川口は「おや、なんですか」と話の流れを切る。
誰にも気付かれない程度に小さく舌打ちをした豊津は、おとなしくニュースの続きを聞くことにした。
会議室のガマガエルたちもまた、一斉にテレビへと目を向ける。その様子はさながら、出来のいい学生のようであった。
『先程、株式会社ビハツの社長、駿河氏の自宅より問題の研究に関するファイルが、警察の家宅捜査によって発見されました。
また、複数社員から駿河氏の秘密裏に行っていた研究の存在が明らかになり、この事態を重く見た警察は本日中にも駿河氏を緊急逮捕する模様です』
キャスターは、記者会見場からの速報を届けた。
この場にいるものにとって、それは好都合なことであった。
実質上のトップはもはや川口なのだ。本来ならば、川口の負担が増え、手腕が問われるところだ。
けれども、今回は違う。
この場に集まった者たちの知恵を借り、ビハツがNPCに受け入れられやすいような体制作りを行うのだ。
「川口くん、駿河の家にあったというファイルは?」
先程とはうって変わって、鋭い眼差しで彼は川口に尋ねる。
「当然、仕込みィでありますよ。私が社長と話した時にィ、渡しておきました」
相変わらず、にたぁ、という言葉が似合う川口。
「社長と話?
それはいつだ?
ウェンディが逃げたことを告発した後か?」
眼光煌めく伊達男は叩きつけるように問いかける。
「いえいえ、私でもォ、そのようなことは致しません。問題ありませんよ」
またも、意表を突かれる。こいつは腹に何か蓄えている。
それはもちろん金が形を変えた脂ではなく、もしかしたらこの場をひっくり返すような何か、だ。
「それで川口くん、ウェンディやメンバーズとか、僕たちに分かるように説明してくれないか?」
重役の一人が口を開いた途端、豊津の表情が変わる。
「川口くん、頼んだ」
川口の腹の内が読めない苛立ちを抱えながら、重役たちと話すために気持ちを入れ替える。
小さな溜め息で、豊津はまた得意の営業スマイルへと戻った。
「ウェンディというのはァ、駿河の作り出した人間兵器ィ、です。」
川口がその汚らしい口を開く。
「人間兵器? それは、どういうものだね?」
重役たちと川口の問答が始まる。
今まで豊津に一任されてきた計画に、彼らが興味を持ち始めたのだ。
「銃や戦車、剣や拳など、この世に存在する火器や刃物を集約した人間でェあります」
しゃがれた声が続ける。
「加えてェ、エネルギーは当社のZエネルギーを利用していますのでェ、動力切れがなく、自然に回復していきます。
新たに弾薬を買ったり作ったりする必要がありません。
戦争においてはァ、小回りが利く上に、尽きることのない核兵器、そんな所でしょうか」
真剣な目で聞き入る重役たち。馬鹿馬鹿しい話に思えるのだが、川口のあまりの真面目な表情に、疑うことはしていない。
「しかもォ、ウェンディのォベースは人間です。さらにィ、まだ若い少女です」
息を潜める重役たちの目を一巡して見て、川口は言う。
「つまり、成長する兵器なのです」
また、重役のうちの一人が興味を示す。
「成長する、兵器とな?」
こくり、と脂肪だらけの顎を頷かせる。
「ええ。けれども、ウェンディがどんな成長するのかはァ分かりません」
「何故?」
と、尋ねたのは豊津。
「ウェンディに関する研究は全て社長――駿河が行ったからァです」
そういえば前にも、ウェンディについて詳しくは知らない。
「何の、ために?」
――作ったのか。
「駿河は、エネルギーの正体の究明により、機械への応用をするため、と言っていました。ただ、おそらく駿河には、さらなる腹心があると私は」
――思います。
「なるほど。それを君は、『軍事用』と銘を打ち、告発したわけだ」
「副社長に伝えない理由なのだ。君が疑問に思ったとしても、世間は疑問に思わない」
「なおかつ、恐るべき人間兵器を世に放ったのだ」
「その理由は、聞いたのか?」
ガマガエルたちが次々と尋ね、最後に豊津が締める。
「それも、駿河は語りませんでした」
川口は丁寧に答える。かなり質問攻めにされているはずなのだが、さらりと的確に答えていた。そのことは彼の有能さから来るものではなく、金への執着からなのだ。
「それでは、あまりに危険なのではないか?」
と、例によって重役の一人が問いかける。
「それゆえの、メンバーズです」
「そうだったな。川口くん、彼らに説明をしてくれ」
と、豊津に言われ、川口は再び説明を始める。
「メンバーズ――とはァ、ウェンディと同じくゥ、Zエネルギーにより特殊な能力を使うことのできるゥ、表向きではァ、『調査員』なのです」
「では、わざわざウェンディを捕獲しないでも研究を続けられるのではないか?」
メンバーズがウェンディの捕獲を目的にしていることをしっているので、豊津はこのように尋ねる。
「それは叶わないのです。ウェンディとメンバーズの違いはZエネルギーの含有量にあります。バイクでも、原付とナナハンでは違うように。メンバーズでは、Zエネルギーの採取や抽出が出来ないのです」
排気量が圧倒的に違う、と川口は言う。
「なるほど……しかし、やけに詳しいのだな、君は」
「ええ。メンバーズの責任者は私なもので。部下のことはよく知っていますよ」
「だが、原付でナナハンは追い越せないぞ」
当たり前の話だ。時速60キロメートルの原付と、200キロメートル程も出るナナハンでは勝負にならない。
「ウェンディというのも人間兵器なのだろう?メンバーズとやらが、殺されることもありうるのではないか?」
「ご心配なく。それがサーキットコースなら確かに原付では勝てません。けれど、森の中なら?」
高すぎる馬力は、逆に仇となる。木と木の隙間の小道など通れないし、くねくね曲がる道では曲がりきることはできない。
慣性で、車体が外へと飛んでしまう。それを止めるために加速を止めてしまったら、意味がない。
しかし、それはあくまでも「レース」での場合。
だが、ウェンディとメンバーズでその話が通用するのか。
そんな疑問は、この場の誰も口にしない。
唯一豊津だけが腹心に思っただけだった。
「まあともかく、そのメンバーズとやらがウェンディを捕獲したのなら、君は……」
重役の言葉に、川口がにたぁ、と口角を釣り上げて笑う。
「えェ、ありがとうございます」
重役たちの表情を伺い、豊津が会議の終わりを知らせる。
一同が一斉に立ち上がり、大きな赤塗りの扉から退室していく。
がらん、となってしまった部屋の中に豊津と川口の二人だけが残った。
二人にもかかわらず隣り合わせになるのが嫌だった豊津は、「話しにくいから」と向かい合わせに座る。
静まり返った会議室の中で、最初に口を開いたのは豊津であった。
「君の働きで、サカエグループは無事にビハツを買収できそうだよ」
褒賞の言葉に、「光栄です、『社長』」川口は感謝の辞を添えた。
「私は、君の事をいささか勘違いしていたよ」
と、豊津は述べる。
隠し事はしても、嘘は言わない主義の豊津だ。
彼は「金への執心は、人の知能さえ向上させるのか」という感心の念を持っていたから、こんな風に述べた。
「しかし…」
と言いかけて、すぐ取り止める。
川口の作戦に深く入れ込んでは、豊津は余計なことを考えなければならないからだ。
川口が何か「隠し事」をしているのは明白だった。けれども豊津は問い詰めることをしないことに決めたのだった。
「待たせてすまんな、ではこれで――」
と、豊津が言いかけたとき、「仁義なき戦い」のテーマソングが鳴り響く。
それは、川口の胸ポケットに入っている携帯電話からだった。胸の脂肪に押し潰され、少々籠った音になっている。
豊津は会議中に携帯電話が鳴ったのを咎めない。
なぜなら、川口が相手の印象を悪くするような失態をすることはないだろうと踏んでいたからである。
川口は携帯電話を開き、醜く太った指で緑色の受話器のボタンを押す。
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